「トクサツガガガ」の小芝風花の演技が、思いきりがよくて気持ちよかった。

2019年のトクサツガガガは、NHKの夜10時のドラマだったので、若者向けのマンガ原作ドラマだったといえる。
見た時は変なドラマだという印象だったのだけれど、いつまでたってもガガガというタイトルと、小芝風花の過激な演技が忘れられなかった。
そこで、オンデマンドで見てみると、特撮オタクの世間体というか、オタクであることを必死で隠す、という社会人の常識の描写が妙に面白かった。
なぜそこまでひた隠しにするのかが、逆に疑問に感じた。
それにしても主演の小芝風花が、原作のマンガの絵にそっくりで、他の俳優陣もかなりマンガの原作そのまま再現されていて、絶妙なキャスト陣だった。

特撮ヒーローにはまる主人公の小芝風花演じる24歳の女性が、特撮オタクである事をひた隠しにしながら、会社員生活をしている。
しかし、影では隠れキリシタンのようにオタクの会話をしたい、というギャップが何とも面白かった。
とにかくオタクの空想癖と妄想が凄く、他の社員にばれないように、いろいろな予防線を張っているのが、細かく描写されていて笑えたのだ。
神経質そうな小芝風花演じるオタク女性が男っぽい恥ずかしさなしのキレのあるセリフや、大胆な演技がピッタリはまっていた。
小鼻を膨らませたり、無防備な表情で変な顔をしたり、恥ずかしさを全く感じさせないような演技が、見ていて気持ちよかった。
北代さんという人物がマンガの原作にソックリすぎて、木南晴夏が演じる 隠れアイドルファンが、原作に忠実なだけで、木南晴夏が特に変な演技をしているのではなく、マンガの原作に忠実なだけだったので、おかしかった。マンガを先に読んでいれば、北代さんの演技は、忠実な演技だったのだ。別に誇張していた訳ではなかった。
要するにトクサツガガガは、キャストが、あまりにもマンガの原作に忠実に、はまりすぎていて、後で確認してそっくりなので笑い転げてしまった。


そもそも、ここまで、原作に忠実なキャストを選んでくるところに、NHKのこだわりと、オタク愛が半端ないことの表れだった。
オタクな考えのわかる製作者がこだわりを持ってドラマを作ると、たまにとんでもないヒット作を出す力を持っている。
倉科カナ演じる吉田さんのセリフの「仲間つくりは狩りです。」というセリフもはまっていた。

特撮オタクを広げていく方法に、1クール分のDVDを見せて反応を見る。という方法や、イケメン俳優のデビュー作をきっかけにして特撮マニアにしようとする勧誘の仕方が細かくて面白かった。
倉科カナのセリフで、笑いながら「狩りです。」というところが一番見ていて、怖かったかもしれない。
オタクの同士を広げて生きていく戦略を考えていて、倉科カナの必死さが出ていた。小芝風花よりも、倉科カナの方が遥かに風格があり、オタクの経験が長く、名言が言えて、凄みがあった。

これまでの「ハゲタカ」「クライマーズハイ」「外事警察」「チェイス」などNHKのドラマの傑作をたくさん知っているだけに、この「トクサツガガガ」は、かなりのこだわりを感じたのだった。
小芝風化が最もキレのある演技をしたドラマと言えるオタクドラマで、あの倉科カナが、濃いキャラを演じているのも新鮮だった。名古屋放送局が制作ということで、名古屋の名物の歌が出てきたりして、地方の良さも感じられた。ある意味で、力の抜けた脱力感が出ていて、笑えたドラマといえる。
気になった点は、寺田心演じる少年をダミアンというホラー映画のニックネームで呼ぶところで、少し可哀そうだと思った。大人の勝手な思い込みをあだ名にするところがドラマ化で、配慮
が必要だったと思う。あとは、松下由樹があまりにも頑固すぎる設定で、この軽いドラマのノリを邪魔していたところで、松下由樹が出てくると、堅苦しい感じがして、この笑えるドラマの設定をジャマしていた。
見ていて、真面目過ぎな母親で、ストレスを感じてしまった。他のキャストが、よかっただけに真面目過ぎる演出が出てしまったと感じた。社会の厳しい目を表現するという点では、現実を描いていたと言える。
他には、特撮オタクを十分満足させる特撮の俳優が登場したりして、俳優の使い方で、かなり感心した。
これからもこういうこだわりを見せたドラマを見たい、と思わせてくれたドラマが「トクサツガガガ」だったと思う。
